page163: 『タコピーの原罪』――「あなたのため」という原罪

もう数年前になったけど、久しぶりに面白い漫画が出たと興奮したのが「タコピーの原罪」だった。普段はほとんど漫画を読まないけど、「進撃の巨人」以来の興奮だったかもしれない。

「タコピーの原罪」は上下巻の短いストーリーで、テーマも暗い内容だけど、とても深い内容だった。哲学、社会学、心理学などの学問につながるテーマがあった。

個人的には、家族の形態がここまで変わっていることに改めて驚いた。星一徹や海原雄山のような毒父は絶滅危惧種になり、現代では毒母の時代になっている。今の時代に星一徹の父親をやってしまえば、警察を呼ばれて逮捕されるリスクがある。(つい最近もあったような)

もう家父長制は日本社会からほぼ消滅しかけている。夫婦共働きが常識のようになり、何なら、夫婦ペアローンで妻が夫と同じ経済力を持つことになった。妻に対する圧倒的な経済的優位を失った夫にそもそも家父長などできるはずもない。

一番のテーマはタイトルにつけられた「原罪」だと思う。
その人を救いたい、幸福にしたい、というのは本当にその人のためだろか?
というテーマがこの漫画にはある気がする。

毒父も毒母も共通しているのが、子を支配する点だろう。

毒母はいう。
「あなたのためだから」とか。
「いい学校に入れば、選択肢は増える」とか。

僕は思う。
「お前らはとんでもない偽善者だ」と。

それは、子のためではなく、子を触媒とした、自己実現だろう。
子に必死の努力をさせ、子が手にした果実を、自分が味わうためだろう。
有名校に入れることができた自分の承認欲求があるのではないか。

支配者たちは幸福の定義権をすべて本人から奪っている。本人が何を望んでいるのかではなく、何を望むべきかまで決めてしまうのであらば、ただの洗脳だ。
星一徹、海原雄山:「俺に従えば立派な人間になる」
教育ママ:「いい学校に入ればあなたは幸せになる」
タコピー:「ハッピー道具で君を幸せにするっピ」

僕が間違えていれば反省する。
子が有名校に入っても、自慢を一切しなければ。
子が有名校に入っても、配管工になることの反対を一切しなければ。

本当に「選択肢を増やすため」なら、その選択肢を何に使うかは本人の自由であるはずだ。

「あなたを幸せにしたい」という言葉は美しい。
しかし、「あなたにとって何が幸せなのか」まで自分が決め始めた瞬間、それは支配に変わる。

タコピーも悪意があったわけではない。
ただ、しずかちゃんをハッピーにしたかった。

それこそが「原罪」なのかもしれない。
子育てと洗脳は紙一重だ。

created: 2026-09-08 21:37:01